ウール羊の職場には、事務員さんが二人いる。
いつもの事務員ちゃんと、ミョーな貫禄を放つおばちゃん事務員さんである。
事の発端は、このおばちゃん事務員さんが何を思ったのか、大量のココナッツサブレを持参してきたことによる。
「いやー、近所のスーパーで食材買ってたら食べたくなっちゃってー(おばちゃん事務員)」
食べたくなっちゃってー、と言いながら、上司コリーさんのデスクの上にドッカと置いたのは、ココナッツサブレでパンパンになったレジ袋である。
「こらおばちゃん。なんで俺のデスクの上に置くんだよ(上司コリーさん)」
「やっだ!!差し入れよ差し入れ!!休憩に入ったらみんなで食べましょー(おばちゃん)」
と、袋から無限ナントカのごとくココナッツサブレを出しながらのたまう。
「だったら休憩室に置いてくれよ(コリー)」
とのコリーさんの苦情を右から左へ聞き流し、さんざん見せびらかしたココナッツサブレをポイポイとレジ袋に戻しつつ、
「エコバック忘れちゃったからレジ袋買っちゃったわ!!2円よ2円!!」
と、レジ袋のお値段にムカついたらしいおばちゃん事務員さんは、ドスドスとレジ袋のココナッツサブレとともに休憩室に去って行った。
そして、おばちゃんが去るとともにソワソワしだす甘いもの好きのメタボ予備軍。
「ココナッツサブレは発酵バターがいちばん美味しいよね!!(社畜A)」
との社畜Aののんきな言葉に、休憩時間の待ちきれない 、“甘いものはすべて四次元胃袋に消える” と日頃から豪語する社畜Bが反応した。
「何を言ってんですか。いちばん美味しいのはトリプルナッツだから!!(社畜B)」
これに反応した事務員ちゃん。
「いやいやいや、シンプルなプレーンタイプがいちばんに決まってるじゃないですか!!(事務員ちゃん)」
そしてタイトルの通り、ココナッツサブレ大戦争が勃発したのである。
「発酵バターに決まってるでしょう!!(発酵バター軍)」
「トリプルナッツだってば!!トリプルナッツ以外は認めない!!(トリプルナッツ軍)」
「いーや!!絶対プレーンです!!(プレーン軍)」
ていうか、綺麗に派閥が出来上がっている。
すなわち、社畜A率いる発酵バター陣営。
発酵バターの美味しさについて、非常に暑苦しく語っている。
つか、ウザい。
かたや社畜B率いるトリプルナッツ陣営。
トリプルナッツがいかに香ばしく、かつサクサクな食感であるかを、これまた鬱陶しく語っている。
ココナッツサブレの食感自体はどれも同じなんじゃないかと思うのだが。
そして事務員ちゃん率いるプレーン陣営。
素材の良さを生かした、素朴な味わいについて眉を吊り上げながら語っている。
素材の良さもなにも、基本の素材は同じなんではなかろうか。
・・・なんて突っ込もうものなら、フルボッコにされそうな勢いである。
そんなウール羊と同僚の黒ヤギくんは、ココナッツサブレならなんでも美味しいという弱小陣営に所属することとなった。
ちなみにコリーさんは酒好きらしく甘いものは苦手である。
ウール羊も酒好きだが、まんじゅうをつまみにビールが飲めるほど甘いものが好きである。
それはそれとして、
すでに休憩時間になっているのであるが、どうやら臨戦態勢の社畜及び事務員ちゃんは気付いていないらしい。
「ウール羊くん、どうしよう。俺、ココナッツサブレを食べに行きたいんだけど(黒ヤギくん)」
ウール羊も食べたいけど、なんか許されない雰囲気が・・・。
「あーもう!!俺は休憩に入るからな!!(コリーさん)」
人畜無害な弱小陣営は、一人を除き隅っこで怯えるばかりである。
そこへ再登場のおばちゃん事務員さん。
「食べるの?食べないの?・・・どっち?(おばちゃんの威圧)」
「「「うっ!!」」」
「食べるならとっとと休憩室に来なさい!!おばちゃんが全部食べちゃうわよ!!(おばちゃんの脅し)」
「「「食べる!!食べます!!」」」
おばちゃん事務員さん恐るべし。
これで一気に終息、みんなで仲良くココナッツサブレを食しました。
そういえば、コーヒー牛乳味ってのもなかったっけ?
これも美味しかったけど、期間限定だったのかな?
売ってなくてちょっと寂しい。