謎の “ノルド仮面” は悩んでいた。
「酒場の服がセクシーで可愛いって聞いたから、ずっとその服を探していたけど」
風の噂では、どうやらアルゴニアン・レディのモリーさんがとある洞窟でGETしたという。
まるで謎の “ノルド仮面” のために誂えたような品ではないか。
「吸血鬼の服飾デザイナーもいい仕事するわね。よし!!この服をGETするわよ!!」
拳を突き上げ、高らかに決意表明をした謎の “ノルド仮面” は、そこら辺をのんきに歩いていたモリーさんを取っ捕まえて聞いてみた。
「どこで手に入れたのか教えてくださらないかしら?」
「アンタそんなキャラだったっけ?しかもなんなの?その変な仮面は」
と、のたまう謎の “ノルド仮面” にドン引きしたモリーさんはあっさり吐いた。
曰く、
「“崩れたファング洞窟” にありましたわよ」
“崩れたファング洞窟” とな?
確かロリクステッドの近くにそんな名前の洞窟があった・・・かな?
謎の “ノルド仮面” は地理に疎く、更に地図を読むのも苦手だった。
つまり、方向音痴である。
驚きである。
まあ、ホワイトラン地方はほぼ草原であるから、ロリクステッドの近くの岩場を探し回っていればいずれは到着するのだが。
ところで、ここスカイリムには吸血鬼及びデイドラを狩ることを生業とする、“ステンダールの番人” と呼ばれる集団がある。
なんというか、
「吸血鬼とデイドラを信仰するヤツらは許さん!!成敗してくれる!!」
と、豪語するわりにはかなり弱っちい集団ではあるのだが、吸血鬼とデイドラを信仰するヤツらには厄介であることには変わりはない。
そんなステンダールの番人と謎の “ノルド仮面” が “崩れたファング洞窟” で鉢合わせになった。
いきなり何を言うのか。
私は美を司る神・ディベラ様を信仰しているのだ。
デイドラを信仰するはずがないではないか。
デイドラといえば信者獲得に情熱を燃やす、超・マイナーなメリなんとかってのがいたなぁ。
と、つい遠い目をしかけたが、もしかして私はヤバい状況に陥っているのだろうか。
謎の “ノルド仮面” はムカついた。
「ざけんな!!これは変な喋る犬のクエストを手伝った時に貰ったのよ!!」
そう。
クエストを完了させた報酬にもらったのであって、信仰しているからではない。
「は?喋る犬?」
「待て。落ち着け」
これが落ち着いていられようか。
なにせ、お気に入りの仮面を貶された(?)のだ。
鉄拳制裁も辞さない構えの 謎の “ノルド仮面” を前に、ステンダールの番人は焦った。
「そ、その仮面!!それは “クラヴィカス・ヴァイルの仮面” といって、権力を司るデイドラ、クラヴィカス・ヴァイルの物だ」
「え?そういえば、そう名乗っていたような・・・?」
「お前、そこはちゃんと聞いとけよ!!かなりムチャブリな契約を持ちかけて、相手が慌てるのをニヤニヤしながら見ている困ったデイドラなんだぞ!!」
「契約はしてないけど確かに困ったわ。なにせツンデレ野郎共のケンカの仲裁をさせられたんだから」
「・・・ケンカの仲裁?」
「変なデカい犬が妙に上から目線で、 “やっぱり仲直りしたいんだけど” というような意味の依頼をしてきて・・・」
「えーと・・・?」
「そのクラヴィカス・ヴァイルってヤツが “ケッ!!ものすごく嫌だが、そこまで言うなら戻って来てもいい” なんて、さらに上から目線でツンデレ発言をしやがって・・・」
「すまない、思考が追い付かない」
「そう?でも続けるわよ。そんなこんなで貰ったのがこの仮面よ」
「・・・・・・なんだか分からないが、俺たちの理解の範疇を越えた何かがあったことは分かった」
「何言ってんの?」
フルフェイスだったため、怒濤の会話で息苦しくなった謎の “ノルド仮面” は、結局仮面を脱いだ。
「お前・・・ピヨりんじゃねーか!!」
「あ、でも鼻と目の部分は空いてたか。いずれにしろ “おばちゃんの井戸端会議” みたいな長時間の会話は無理だわ」
謎の “ノルド仮面”。
その正体は自分に似合う服(鎧含む)を求めて放浪する、“お洋服ハンター・ピヨりん” だった。
「つか、いい加減改名したいんだけど。しかもなんだ、その “お洋服ハンター” って」
「弱っちいんだから」
「ヒドイ・・・ヒドイわ!!」
痛い所を突かれたステンダールの番人たちは、泣きながらどこかへ走り去っていった。
「絶対、吸血鬼のローブをGETするわよ!!」
との決意も新たに、ピヨりんはウキウキと内部に潜入していったのだった。
※デイドラとは※
定命の者(人間等)が住む次元であるムンダスの創造に関わらなかった神々の総称。
オブリビオンという別次元に住んでいる。
なんというか、いわゆる悪魔チックな何か。
「オブリビオン」というゲームでは、ここのゲートが開いてしまい、最終的にシロディール帝国皇帝の息子とともにゲートを閉じるまでがメインクエストとなる。
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謎の “ノルド仮面” の深遠なるお悩み
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